生活習慣の乱れやストレス、ホルモンバランスの乱れ等が原因で起こる自律神経失調症は、潜在的な可能性のある人を含めると全国で600万人以上もいると言われている現代病の一つです。
自律神経には全身の器官をコントロールする働きがある為、一度バランスが崩れると様々な肉体症状、精神症状が起こり、場合によっては慢性的に続いてしまいます。体の内側から体質を改善してくれる漢方は、自律神経失調症の治療の強い味方です。今回は、自律神経失調症の症状に効果のある漢方を症状別にご紹介します!
症状別に選ぶ|自律神経失調症を改善させる漢方7選
1 不安感や不眠に:加味帰脾湯(かみきひとう)
眠れないというストレスから更なる不調を引き起こす可能性のある不眠症状は、自律神経失調症の症状の中でも特に深刻な症状の一つです。
胃腸を丈夫にして貧血症状を改善する生薬を配合した加味帰脾湯(かみひきとう)には、不安感や睡眠と密接な関係のある胃腸の働きを助けながら血行を改善し、不眠を改善する効果があります。
漢方を使用する際には、「証(しょう)」と呼ばれる体質の中から自分の体質を見極めて使用する必要がありますが、加味帰脾湯は「胃腸が弱い•やせ形•疲れやすい」などの特徴がある「虚証(きょしょう)」のタイプの人に効果のある漢方です。
また、風邪薬として服用する葛根湯のように、甘草を含む漢方と一緒に摂取する際には副作用に注意する必要がありますので、服用する際には飲み合わせに注意が必要です。
2 ヒステリー症状と不眠症に:黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
虚証タイプの人だけでなく、「胃腸が強い•がっちりしている•体力がある」という特徴を持つ「実証(じっしょう)」タイプの人の場合は、ストレスが鬱積して体に熱が溜まることで、自律神経失調症による不眠症状が起こりやすくなります。
不安や落ち込みというよりはイライラして眠れないという症状が多く見られる場合、体を冷やす作用のある黄連解毒湯(おうれんげどくとう)が症状の改善に役立ちます。慢性的なストレスによるノイローゼ状態が続く人、体がのぼせてしまって寝付けない人などに特に効果があります。
3 肩こりの改善に:桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
一般的な症状の一つとして見過ごされがちですが、慢性的な肩こりも自律神経失調症の症状の場合があります。滞った血流をほぐして改善する働きのある桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は、強い肩こりの症状の改善に効果的です。
桂枝茯苓丸は血行障害を改善する作用がある為、肩こりの他に月経トラブルにも効果があります。女性向けの漢方として処方される事も多いですが、体力があってがっしりとした体型の実証タイプの人向けの漢方ですので、男性で肩こりのある方にもおすすめです。
4 食欲不振の改善に:柴朴湯(さいぼくとう)
心も体も健康に毎日を過ごす為には、規則正しい生活に加えてしっかりと栄養を取る事が大切です。自律神経失調症の症状が食欲不振として現れてしまっている人は、ストレスからくる胃のむかつきや上半身の緊張を緩和する効果のある柴朴湯(さいぼくとう)が症状を改善してくれます。
柴朴湯は虚証と実証の間である中間証の人に効果のある漢方になります。虚証気味の人でも問題はありませんが、虚弱体質の人には向かないので注意しましょう。
5 血流の悪さやから起こる耳鳴りに:柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこりゅうこつぼれいとう)
血流の悪さや脳の機能低下から起こる耳鳴りは、自律神経失調症の症状として訴える人の多い症状です。ほとんどの場合、耳鳴りは命に関わるような危険な病気ではありませんが、一度気になりはじめるとストレスになってしまう事も多いので改善したいと思っている人も多いのではないでしょうか?
耳鳴りの症状の改善には、血圧を下げて気持ちをリラックスさせる効果のある竜骨という生薬を含む柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこりゅうこつぼれいとう)が効果的です。耳鳴りの他に、不眠やイライラ等の精神症状にも効果のある中間証タイプ向けの漢方ですので、耳鳴りが気になって精神的にストレスを感じる場合にも適しています。
6 めまいや頭痛に:半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
自律神経失調症のよくある症状の一つであるめまいや頭痛は、東洋医学では体内の水分バランスの偏りが原因だと考えられています。利尿作用のある生薬や、めまいから起こる吐き気を抑える効果のある生薬を含む半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)は、体内の水分の循環を促し、毒素を排出してくれる漢方です。
めまいや頭痛の症状はやせ形で疲れやすい虚証タイプの人に多く見られますが、半夏白朮天麻湯は虚証タイプの人に適しています。
7 様々な精神症状に:加味逍遥散(かみしょうようさん)
自律神経失調症の症状の多くは体の不調として現れますが、体の不調が長引く事により精神的な症状を引き起こし、近年ますます増えているパニック障害やうつ病の原因となる事があります。体の不調が慢性的になれば、どんな人でも落ち込みやすくなるのは当然の事ですが、精神的な症状が目立って来た場合には、その症状に注目してなるべく早めに対処をしましょう。
自律神経失調症による精神的な症状に効果があるのは、加味逍遥散(かみしょうようさん)という漢方です。女性の更年期障害やPMS、虚証タイプの肩こりの症状を緩和する漢方としても非常に有名で、血流を改善してホルモンバランスを整える働きがあります。
こちらは虚証体質の人、主に女性に効果があり、甘草を含む漢方薬との飲み合わせに注意する必要があります。ちなみに、男性や実証体質の人で同じような症状がある場合には柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)が良いでしょう。
今回お届けした症状別に選ぶ|自律神経失調症を改善させる漢方7選はいかがでしたか?
自律神経失調症の症状は一人一人違います。はっきりとした原因がわかりづらい為、症状が長引きやすい傾向にあります。自分の体質をよく見極め、体質にあった漢方を効果的に使いながら、焦らずゆっくりと治して行きましょう!
まとめ
症状別に選ぶ|自律神経失調症を改善させる漢方7選
漢方1:
不安感や不眠を改善する、加味帰脾湯(かみきひとう)
漢方2:
ヒステリー症状と不眠症を改善する、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
漢方3:
肩こりの改善には、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
漢方4:
食欲不振の改善には、柴朴湯(さいぼくとう)
漢方5:
耳鳴りの改善には、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこりゅうこつぼれいとう)
漢方6:
めまいや頭痛を改善する、半夏白朮天麻湯(はんげこうぼくとう)
漢方7:
様々な精神症状を改善する、加味逍遥散(かみしょうようさん)