アトピーの保湿に関する5つの考察

トラブル

アトピーの人の肌には、水分保持力が低く乾燥しやすいという特徴が見られます。肌が乾燥していると外部からの刺激や異物の侵入を防ぐバリアー機能が弱まり、症状を更に悪化させる危険性がある為、保湿剤の使用はアトピーの治療の定番となっています。

しかし、保湿をする事でアトピー症状が悪化したという例もあり、一概に保湿をする事が良いとも言えないようです。今回は、アトピーの治療に役立つ、保湿とアトピーの関係についてお伝えします。



アトピーの保湿に関する5つの考察


考察1:保湿剤はアトピーの予防薬として効果が高い


アトピー性皮膚炎は遺伝と大きな関係があり、両親のどちらかがアトピー因子を持っている場合には30%、両親共にアトピー因子を持つ場合には50%の確立で子どもにアトピーが発症する事が解っています。

2014年に行われた国立成育医療研究センターの実験では、アトピー因子を持つ親から生まれた新生児に8ヶ月間毎日保湿剤を塗った結果、アトピーの発症率が3割ほど低下する事が明らかになりました。

このことから、保湿をする事は、アトピー体質の人のアトピー発症の予防に確実な効果を発揮するということが解っています。


考察2:保湿は肌のバリアー機能を高め、アトピー症状を緩和する


保湿剤は、アトピーの予防だけでなく既に発症しているアトピー症状の治療の際にも使われる事が多いです。日本皮膚科学会による「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」では、アトピー治療の原則の一つとして、異常な皮膚機能を補正するスキンケアを行うことが定められています。

アトピー症状のある肌には、皮膚表面で生成されるタンパク質の一種であるフィラグリンの減少、コラーゲンの過剰分解、保湿成分セラミドの不足が見られます。どれも肌表面の水分を保ち、アレルゲンの侵入を防ぐ為には必要な成分ですので、これらの成分を補ったり、水分を逃がさないようにする為に保湿剤で保湿することで、アトピーのかゆみや炎症を緩和させる事ができます。


考察3:アトピー肌の治療には保湿剤の選び方が重要


アトピーの予防や治療に保湿が有効な事は前述の通りですが、「保湿剤を使用したことによってアトピーの症状が悪化した」という人も中にはいます。保湿剤の使用によってアトピーの症状が悪化した場合、その多くは保湿剤の成分が肌の状態に合っていなかったということが原因として考えられます。

アトピーの治療に使用される保湿剤には主に2種類の働きを持つものがあり、軟膏タイプ、ジェルタイプなど、成分や使用法によって様々な種類に分かれています。代表的な種類をご紹介しますので、実際に使用しながら、自分に合う保湿剤を探してみてください。

<アトピー肌の保湿剤の種類>

①肌表面を覆い、外部刺激や水分の蒸発を抑える保湿剤
病院で処方されるワセリンやホホバオイルが代表的です。肌内部に浸透する事が無い為、肌への刺激は比較的少なめですが、油分を多く含むものの場合、塗った部分に付着したホコリ等が炎症を悪化させる場合もあります。できるだけ低刺激のもの、無添加の物を選びましょう。

②肌内部の水分を保持する保湿剤
尿素やセラミドを配合した保湿剤、ヒルドイドなど。肌内部に浸透して水分を保持する為、炎症が強い場合は少しの量でも刺激になってしまう事があります。特に、尿素には刺激性がありますので炎症が激しい部分や顔への使用は避けた方が良いでしょう。


考察4:セラミド成分配合の保湿剤は、界面活性剤や成分に注意


アトピーの原因に関する全容は解明されていませんが、アトピーを改善する保湿成分として最近特に注目されているのが化粧品などにも配合されているセラミドです。

神戸大学医学部皮膚科による臨床テストでは、アトピーの人の皮膚の乾燥部にセラミドを含む保湿剤を4週間塗った結果、約65%の人に症状の改善が見られたとの結果が報告されています。

セラミドを含む保湿剤は保険適用外の為、市販の物を購入して使っている人も多いようですが、水に溶けにくい性質を持つセラミドの保湿剤は、配合する際に界面活性剤を使用している物が多いので注意が必要です。

界面活性剤は少量であれば問題ない場合もありますが、アトピー肌の人には刺激が強すぎる場合があります。また、セラミドの種類は「ヒト型セラミドもしくは「天然セラミド」の表記のある物を選びましょう。


考察5:脱保湿で肌のターンオーバーを正常化する


保湿する事で補うことのできるセラミドは、角質層がターンオーバーする際に生成されます。肌が乾燥してはがれ落ちている時に保湿をしてしまうと、結果的に肌のターンオーバーを遅らせる事になり、肌本来の保湿機能を弱めてしまう事が考えられます。

このような考え方から、保湿剤によって悪化してしまう人や、実際に保湿剤に対しての接触アレルギーが認められた人、特に治りづらいアトピーの症状が続いている人に対して一切の保湿をしないという方法でアトピーの治療を行う、脱保湿という方法があります。

この方法はステロイド薬を使用せずにアトピーを治すという考えを持っている皮膚科医の間でも広く行われている方法で、実際に大きな成果を上げています。

名古屋市立大学医学部皮膚科による、「重症成人型アトピー性皮膚炎患者のステロイド外用剤離脱」でも保湿剤や軟膏を一切やめる事による症状の改善が報告されており、脱保湿でアトピーを改善する方法を紹介した本もいろいろとありますので、何をしてもアトピー症状が改善しないという人は、一度試してみる価値がありそうです!

 

今回お届けしたアトピーの保湿に関する5つの考察はいかがでしたか?アトピー肌の人は、症状のある部分もない部分も乾燥肌になっているということは事実です。保湿剤の種類も様々ですが、敢えて保湿をしないという方法で体の内側からアトピー症状を改善して行くという方が合っている場合もありますので、自分の肌の症状を見ながら一番良い方法を見つけてみてください!

まとめ

アトピーの保湿に関する5つの考察

考察1:保湿剤はアトピーの予防薬として効果が高い
考察2:保湿は肌のバリアー機能を高め、アトピー症状を緩和する
考察3:アトピー肌の治療には保湿剤の選び方が重要
考察4:セラミド成分配合の保湿剤は、界面活性剤や成分に注意
考察5:脱保湿で肌のターンオーバーを正常化する


Copied title and URL